2017年11月1日〜7日スイス研修会に参加しました。
以下、研修内容をご報告致します。
《研修内容》
【1日目】成田空港⇒チューリヒ空港⇒ジュネーブ空港
約12時間のフライトを経て、PM19:30頃ジュネーブホテル着。
ホテル内でディナーを食べて就寝しました。
空港には沢山の時計の広告があり、さすが時計の聖地だと感じました。
【2日目】ジュネーブ
レマン湖見学、サンピエール大聖堂、美術・歴史博物館、
パテックフィリップ博物館
■レマン湖
ジュネーブの象徴的な湖で、日時計や花時計が有ります。(花時計はパテック社が提供)また、湖の周りのビルには有名時計メーカーの看板が多数見られ、時計業界に従事していなくてもブランド名が記憶に残る事は間違いないでしょう。
■サンピエール大聖堂…かつてカルヴァンという人が宗教改革を行った事で有名です。棟の上まで登る事が出来、空からジュネーブ市内を一望出来ます。
■美術・歴史博物館
約100年前に建てられた建物で銃や槍・絵画など多岐に渡る展示がして有りました。中には時計のベルトみたいなものも有りました。(装飾用のブレスレット?)
■パテック・フリップ博物館
時計の歴史的な収集物の展示で約2,300点のコレクションが有りました。最初の時計は1530年から40年頃にドイツで作られたのが最初と言われておりますが、時計の約500年の歴史を順々に見て回る事が出来ます。
また、全ての展示物はそこで働く技術者が調整を施した物を当時の正確さで動かす事は出来るとの事で,最初の時計は1時間前後の誤差は許容範囲とされており針も1本のみでした。
また、非常に精密で精工な七宝の時計や金細工の時計が沢山有りました。
当時の図柄としては教会画が多く、当然コピーや写真などは無く目で見て描いて行くのですが、細かく精密に描いて有り非常に高い技術力が表されています。
ここにあるコレクションの多くは中国に有ったが1970年頃から買い戻して収集されたとの事でした。
次にオートマタと言われる機械仕掛けを施したものも多数見られ、鳥が鳴いたり、羽が動いたりする仕掛けが施されており、その動きが本物の様で非常に良く出来ており、目の前で実際に動かして見せてもらえる機会も与えられ、日本では購入の意思がない限り、滅多に見る事が出来ない体験も出来ました。
図書館では、希少な専門書が有り、中には現在に換算すると約2,000万円もすると言われる蔵書も有りました。また、修理工具や昔の機械のあるフロアも有り、技術者でなくても憧れをもつようなものが沢山おいて有りました。
今回はパテックの腕時計のフロアは改装中との事で入れない事が残念でしたが、時間が許せばもっと時間をかけてみても新しい発見があると思いますし、ガラスケースの中にあるとは言え、全ての作品が細かい所まで非常に繊細に作られており、技術力の高さを見ることができました。昔からの徹底した技術力や妥協しないもの作りが永く評価され、現在にもその価値を伝える事が出来る事は素晴らしい事だと感じました。
【3日目】ラ・ショードフォン、ル・ロックル
ユリス・ナルダン社、ジラール・ペルゴ社
■ユリス・ナルダン社
時計内部パーツの製造・組立て・デザインを生み出す各部署を見学しました。
製造・組立ては、沢山の高度な技術を持っている機械を使用して量産できる現代的な部分と、仕上げの部分の人の手が入らなければできない仕事の両面を実際に見ることができました。
とにかく作業室はどこに行っても窓がとても大きく取られていて、太陽の光がふんだんに射し込み、明るく開放的な印象を受けました。
次にエナメル文字盤(クロワゾネ)の工房も見学しました。
金線で輪郭線をつくり、その中を七宝で埋めて装飾していく技法です。
こちらは完全に手作業でしか行えないものであり、職人達の技術に圧倒されました。
ガラス粉末を文字盤に載せ800度の窯で繰り返し焼き溶かし、ガラスコーティングを作り上げていくのですが、これがとても難易度が高く、途中で気泡がわずかでも入ると使用出来なくなり、出荷するまでに75%が破棄されていくそうです。
通常では考えられないほどの手間がかかっており、実物は納得の素晴らしさであり、芸術品でした。
ムーブメントの現代的な部分と何百年も変わる事のない技法で作られた文字盤の組合せに感動しました。
■ジラール・ペルゴ社
ブリッジシリーズで使用されているブリッジを惜しみなく出してくださり、
そのパーツの木片での磨き(艶出し)工程も全て実際に見ることができました。
自社でのパーツ制作など時計に対して真摯に、尚且つとても自信を持ち作っていることが伝わってきました。
ここでは日本人時計技術者の方とお会いできました。日本人時計技術者の方が扱っているトゥールビヨンを間近で撮影や見せていただくこともできました。ケーシングされていないものを見ることができた貴重な体験でした。
そしてどの技術者であっても実際使っている工具は私達と同じであり、見たことあるものばかりで特別なものではないのだと妙な親近感が湧き面白く感じました。
2社を見学しただけでもメーカーとしてのこだわりやプライド、歴史をとても強く感じられました。日本で修理を受ける私達ももう一度気を引き締めて時計をお預かりすることに対して責任を持つこと、時計を永く使っていただくためのお手伝いをしなければならないと考えを持ち直す機会をいただけたと思っています。
【4日目】インターラーケン、ベルン、ビエンヌ
シルトホルン見学、ベルン見学、オメガミュージアム見学
■シルトホルン(大パノラマ展望台)見学
インターラーケンからロープウェイで、大パノラマ展望台・シルトホルンを見学しました。シルトホルンは、アイガー、メンヒ、ユングフラウの3山を始め、3000〜4000m級の山々をぐるりと一望できます。
また、映画『女王陛下007』の撮影に使われた360度回転レストランも見ることが出来ました。
■ベルン見学
インターラーケンからビエンヌに向かう途中で、ベルンに立寄ることができました。ベルンはスイスの首都であり、観光地としてとても魅力的な街でした。
有名な時計塔や、可愛らしい街並みを見学することが出来ました。
■オメガミュージアム見学
ミュージアムでは昔から今まで160年以上の歴史を証言する空間に、ムーブメント、時計、機器、道具、写真、版画、ポスター、サイン、数々の受賞歴や証明書などが公開されていました。
また、この日はオメガ新工場のお披露目フェスティバルが開催されており、博物館の他、新工場内部の見学ツアーにも参加することが出来ました。
部品の管理や大型タッチパネル、数々の実験施設など、各所に世界最新鋭の技術が盛り込まれており、圧倒されました。
【5日目】ラ・ショードフォン、チューリヒ
国際時計博物館、アンティークマーケット、
グロスミュンスター・フラウミュンスター
■国際時計博物館
時計関係に従事している人なら当然聞いた事がある小さな町「ラ・ショードフォン」に国際時計博物館はあります。
全てが時をテーマに関するものを展示してあり、日時計・懐中時計・オートマタ〜クロック・腕時計・工具・作業机・部品など様々な時計の歴史を、順を追って見る事が出きます。
中には修理工房も併設してあり、時を測るものとして「ビールをどの位で飲みきるのがベストか?」と言う事でしょうか。そのようなポップも置いて有りました。
パテックフィリップ博物館もそうですが、ここでも歴史的価値のあるものを、そのまま展示するのではなく修理のコーナーも併設している事で、修復も伴って展示しており、古いものを大事にする事が当然のように存在しておりました。
建物もそうですが、古いものを壊して新しくするのではなく、古いものを直す、もしくは増築して永く使う事で過去を大事にして未来に繋げる事を当たり前のようにしてきた結果が、文化や価値として人に認められるのだろうと感じました。
最後に、お土産も「時」に関するもので埋め尽くされ、時計関係の専門書、時計型のチョコ等、見ていて楽しいものばかりでした。
■アンティークマーケット
国際時計博物館の地下では、アンティークのディーラーによる蚤の市が開催されておりました。主に古い旋盤や工具、アンティーク時計を販売しており、場合によっては値引きの交渉も出来、雰囲気だけでも非常に楽しい時間でした。
持ち帰って自店舗にて販売を主にしているバイヤーは当然、中を開けてムーブを見て判断しているとの事で、中にはまがい物も入っている事を念頭に置いて自己責任で購入しなければなりません。
その中でも私たちもディスプレイとしての工具やエナメル文字盤等を購入してきました。
■グロスミュンスター・フラウミュンスター
チューリッヒにある大聖堂。フラウミュンスターにはシャガールのステンドグラスがあるのですが、到着が夜になってしまったので見られませんでした。
外観だけでも非常に大きな存在感が有り、正時になると大きな鐘の音を聞く事が出来ます。昔は教会の時間で人々が生活していたのですが、現在でも鐘の音が鳴り響く町は素敵でした。
【6・7日目】チューリヒ空港⇒成田空港
日本時間11月7日8:55に帰国しました。
工場見学や博物館見学はもちろん、個人では行くことの出来ないメーカー工場を見学することが出来、大変有意義な研修でした。
また、今回は、現地の日本人時計技術者の方、独立時計師の方、博物館内で修理をされている方、バイヤーの方、現地通訳の方など、非常に沢山の方々と出会い、お話を伺うことが出来ました。
このような体験を仕事にも存分に活かし、時計業界のさらなる発展に貢献したいと思います。
作成:東京美装商工業協同組合
スイス研修参加者
2017年12月吉日
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